ウソつき清掃員おじさん(推定70歳代)

以前にも書いたことがあると思うのですが、わが図書館では有名な利用者のおじさんがいます。
白髪の落ち武者ヘアスタイルで、ヨレヨレでシミシミな格好をして、強烈な体臭を放つおじさん。
ぱっとみどう見てもホームレス。
でもちゃんと大学のIDを持っているスタッフ。部署はCutodialなので広大なキャンパスのどこかの清掃員。

図書館には20年以上出入りしていて、借りた本を返却しないことから「罰金を許してあげない(削除しない)ように」というメモまでアカウントに残っている始末。

以前現れたときは、メールはチェックしない、電話も自宅にない、と言い切るやいなや、ペーパーレスのILLシステムにぶーぶー文句を言いつつもILLのアカウントを作成し、こちらもしぶしぶ本が届けば手紙を出して知らせる、という措置をとりました。
1万人登録がある当図書館のILLシステムで、こんな人ひとりだけです。

このおじさん、しかもえーらい教授ぶった振る舞いをします。
ミエミエのうそ。

やれ自分はPhD(博士号)を取った時の論文の資料がいるだの、以前はクラスを教えていただの、今本を書いているだの、何が本当なのか怪しい限り。

図書館に30年以上いる上司の上司は、以前私に「いや、あの人は博士号取ってないわよ、論文をまだ終わらせてないの。」とサラっと言ったので、調べてみたら大学では「清掃員」として登録されていました。


今回なんで来たかというと、上司が休暇中だった2週間前にやってきて、リクエストの仕方を全く忘れたというんですよ。
それで、1つだけリクエストの仕方を見せてさっさと立ち去ろうと思ったら、5つも立ち合わさせられました。
その間も全く興味もないのに自分のリサーチトピックがめずらしいんだとか、この資料はどういう事情でいるとか、以前ついたうそを繰り返していました。
博士号を取ったときの論文のReferene(参考文献)が欠けていたからまた調べなおせねばならんとかいうのですが、Refence抜けたまま、大学から博士論文にOKが出るわけがないので、「やっぱりこの人博士号なんてもってないやん」と再確認することに。(苦笑)

そのとき通りかかったDさんにもものすごい同情するような顔で見られ、あとで「Didn't that guy stink? (臭かったでしょ、あの人)」と言われました。(^_^;

今日は、リクエストして使用済みの2冊の本を返しにきて、「あとの3つの記事はまだかね」というようなことをいいに来たのでした。

記事のコピーはオンライン処理され、利用者のアカウント上にアップロードされるとメールが自動的に行くようになっています。なのでILLスタッフがタッチせずにメールの通知が行きます。
利用者は自分でアカウントにログインしてPDF形式の記事をプリントアウトする仕組みです。

このおじさんはメールアドレス持っていても「俺はつかわない」といって聞かない人。
スタッフだって彼の記事がもう届いているのか調べないとわからないし、本人もメールチェックしないからわからない。

私はとにかく彼のリクエストを片付けてしまいたかったので、すでに彼のアカウントにある記事をプリントアウトして渡してしまいたかったのですが、今回は上司がいますから、彼女がストップをかけました。

3つの記事のうち、ひとつが86ページもあり、「それはうちでプリントアウトはするべきではない」ということになったのです。

結局、上司がかなり強い調子でILLサービスの説明をし、いちから丁寧に利用の仕方を彼に教えていました。(って私も上司も1回ずつは同じことをやってあげたことがあるんですが)

丁寧に扱おうとがんばった私には、ずけずけとした態度のくせに、強い調子の上司にはヘコヘコしてんでやんの。
上司は自分でリクエストして自分で記事をプリントアウトできないなら、ILLは利用できない、というような説明をしたようです。

結局あきらめて、大学のオンラインIDを彼に調べに行かせたようです。
オンラインIDがないと、プリントできるパソコンにログインできないんですよ、大学構内はどこに行っても。「すぐ忘れるから」とか「すぐトラブルになるから」とかいう彼のいつもの言い訳には耳の貸さない上司。すばらしい。


<30分後>

今度は館内のPCがいっぱいあるマルチメディアセンターから電話をかけてきました。
電話を出てしまったのは私。
今度は、「青いセキュリティのページがあがって、10分経ってもログインできない、毎回こんなのなのか、午前中をこんなに費やしてまだ記事にもたどり着かない、どうなっているんだ」とかなりご立腹。

何度も「それは利用者用のPCの設定に違いないので、そこのスタッフにきいてください」とお願いするも「あんたのところのサイトだろうが」といって聞かない。
私も実際にデスクのPCでIEFirefoxでログイン実験をしてみるが青いセキュリティなどポップアップしてこないし問題もない。
それも繰り返し伝えるが聞かない。

もう言葉もなくなってしまった私に「You don't know, huh? I'll play around a bit and call you back.(あんたにはわからんか。じゃあいろいろいじってみてまたかけなおす。)」といって切られました。


<20分後>

今度はオフィスまでやってきて、
「You should've told me to use Foxfire. The Internet thing didn't work. (君はフォックスファイヤーを使うようにはじめから言ってくれればよかったんだ。インターネットのアレは使えないじゃないか。)」

といかにも、時間の無駄をさせられたとこれまたご立腹。
いやね、FoxfireじゃなくてFirefoxなんですけど。
しかもInternet thingってInternet Explorerのことっすか?


もう私、ご丁寧でいられませんでしたよ、この時点で。
「I told you I tried with both Firefox and Internet Explorer and it was fine. I told you it was the security setting of the public computer there. (ファイヤーフォックスとIEと両方で試してなんともなかったって言ったじゃないですか。あれは利用者用のPCのセキュリティだって行ったじゃないですか。)」と珍しく反撃。

いや、私が利用者に反撃するのってほんっとうにないんですよ。
客商売の家で育ってますからね。
非営利に勤めてるくせして、いまだに「お客が正しい」精神がしみついているんでしょうか。

おじさんは、「ああさよか」とだけ言ったあと、べらべらとまたウソの自慢話をして去りました。


<10分後>

なんとこのオヤジはこのあと別の部署に行き、そこでILLシステムの文句を言ったそうです。
「自分が前回利用したときはまだリクエスト用紙のカードがある時代で」うんぬん。
それウソやん。去年も使ったやん自分。
クレームを受けたその部署の司書が、上司の上司にメールをし、それが回ってきました。
他の部署の人間もILLのリクエストに関して助けられるようになるべきとか書いてあったよ。
いや、わがまま言い過ぎて私の上司に叱られて、ILLまでもう来にくくなったからそんなこと言ってんでしょ。

うちらがもうこれ以上の特別扱いをしないとなったら他のところにいって文句いうんだもん。
うそばっかついてるし。
参っちゃう。

上司が「本当の事情」をメールで彼女の上司と司書さんに説明するはめになりましたとさ。

「特別扱いもいいかんげんにしてほしい」というのが私たちのホンネ。
まあこの人学生でも教授でもないですしね。
なのにいつも誰かの時間を20分は独占するんですよ。
私たちが、実は彼が清掃員で教授でもないこと知ってるって知らないんだろうなあ。
しかも臭いし。
ちうか風呂入れよ。