怪しい手紙

今朝職場につくと、上司が困った顔で手書きの手紙を読んでいました。
なにごと?という顔をしていると、読んでみて、とその手紙を私に渡しました。


手紙は、とある刑務所の囚人さんから。


彼はどうやらとある学術刊行物を探している模様。
うちの図書館が所蔵していると思って手紙を書いたのです。
しかし、うちが所蔵しているのは彼の探しているものと酷似したタイトル。
「まちがってますよー、こっちですよー、しかもうちにはありませんよー。」
というような内容の返事を書きました。

なぜに上司が書かずに私が書く?
上司は「私は返事書きたくない、嫌だ」っていうんだもの。

その理由は、この囚人さんの探している出版物のタイトル。

「火薬学会誌=Journal of the Japan Explosives Society」


本当です。ウソじゃないです。
日本の出版物。
彼がうちの図書館にあると思ったのは、英語バージョンがあるまったく別の出版物、でも産業火薬関係。


囚人がなぜ、火薬・爆発物を調べているの?


かなりアヤシイ。
しかも、彼の手紙の本分には、タイトルを日本語タイトル「Kayaku Gakkai shi」でしか上記せず、明らかに「Explosive=火薬・爆発物」という言葉を使うのを避けている・・・。

しかも、刑務所にある図書館のILLを利用したくないという意図がはっきりと書かれています。どうしても直接記事を送ってほしいと。
ILLを使うと、記録に残りますし、なんせ今、愛国心法とかいう人権無視・憲法違反の法律によって、刑務所の図書館の記録は監視されているはずです。

上司はこんなあぶなそうな人に返事だして名前知られたくない、という言うのです。


囚人さんの中にも、更生してがんばっている人も多いと思うんですよ、だからはなからアヤシイと拒絶して返事を出さないのもどうかなあ・・・。
というわけで、私が返事役を買って出たわけです。
私は名前が明らかに日本人だし、日本の出版物についての問い合わせに答えているわけだから信憑性もあるし。

返事には、私、しっかりと「Explosive」という言葉を数回使い、しかも出版物の記録をプリントアウトして、「Explosive」という言葉が入ったタイトルにしっかりとハイライトを引いておきました。さらに、ILLを通してほかの図書館にリクエストするように強くすすめておきました。

一応、その刑務所の郵便物課に電話して、入ってくる手紙は全部まず職員がチェックして読んでから囚人のみなさんに渡していることを確認しておきました。大学名も残したので、手紙が届くころにはああ、これかとちゃんとチェックしてくれるのでは。

囚人さん本人からの手紙も同封。
とりあえず、「ちょっと!この人爆発物調べてるよ!」という警鐘は鳴らすことはできるかと思われます。
ただの趣味のリサーチだとしても、やっぱりアヤシイですわな、これは。

はあー、うちの図書館にこの刊行物なくてよかったぁ。w